AIにアイデアを出させても刺さらなかったので、Human Gateで絞る仕組みにした
AIにアイデアを出させること自体は難しくありません。実際、Money-Flow-Firstの評価軸で10件の候補を作り、Opportunity Gatesにかけて4件のfinalistまで絞り込むところまでは、AI Idea Explorerというツールを使えば数十分で終わりました。
GitHub Release Evidence Bundle、Blender Marketplace License Metadata Checker、YouTube Sponsorship Deliverable Ledger、Tiny SaaS SOC2 Evidence Expiry Tracker——どれも「既存のお金の流れがある」「reachabilityがある」という条件はクリアしていました。ただ、自分自身に「これを自分で使うか」「作ってみたいか」を聞くHuman Gateにかけたところ、4件とも Q1=NO / Q2=NO でした。
ここで「もっと良い案を出させよう」とAIへの指示を複雑にするのではなく、評価軸そのものを見直すことにしました。今回はその過程を、実際の数字とともに残しておきます。
最初はMoney Flowを重視していた
1周目の評価軸は、Existing Money Flow、Reachability、Economic Scale、Stock-like Economicsなど、事業として成立しそうかどうかが中心でした。既存のEtsy手数料やGitHub Marketplaceの有料ツールなど、隣接するお金の流れの実例を参照しながら10件の候補を生成し、Opportunity Gatesで4件のfinalistまで絞り込みました。
理屈の上では悪くない候補でした。しかしHuman Gateでは4件とも Q1=NO / Q2=NO。「売れそう」と「自分が作りたい」は別問題だった、というのがここでの発見でした。
Personal Use FitとBuilder Interestを追加した
2周目では、money-flow系の評価に入る前に Personal Use Fit と Builder Interest という2つの事前ゲートを追加しました。12件の候補を生成し、そのうちPersonal Use FitがREMOTE、Builder InterestがLOWだった2件は深い評価に進める前に外し、残り10件を評価してfinalist 5件まで絞り込みました。
- Windows Transfer Integrity Map → Q1=NO / Q2=NO
- AI Agent Run Provenance Diff → Q1=YES / Q2=NO
- RAW Sidecar Integrity Auditor → Q1=NO / Q2=NO
- Guitar Practice Take Comparator → Q1=YES / Q2=NO
- Android Privacy Disclosure Diff → Q1=NO / Q2=NO
初めてQ1=YESが出た候補が2件出ました。ただしQ2はまだ弱く、「興味はあるが、AIに大部分を作らせてまで外へ出したいとは思わない」という状態でした。
YES案の共通構造を抽出した
Q1=YESになった2件、AI Agent Run Provenance DiffとGuitar Practice Take Comparatorを並べてみると、次のような共通点がありました。
- 比較
- 差分
- 履歴
- 繰り返し使う
- データが蓄積すると価値が増える
- deterministicな価値がある
ここがこの取り組みの転換点でした。候補そのものを再利用するのではなく、「なぜ自分はこの2件にYESを出したのか」という構造を、次の生成条件として戻すことにしました。
focused ideationで初めてY/Yが出た
上の構造を軸に6件の候補を生成し、finalist 3件まで絞り込みました。
- Agent Run Regression Ledger → Q1=YES / Q2=YES
- Guitar Section Progression Map → Q1=NO / Q2=NO
- Android Release Regression Timeline → Q1=YES / Q2=NO
Agent Run Regression Ledgerで、初めて Q1=YES / Q2=YES が出ました。中身は、AI coding agentの実行結果を過去のrunと比較して、改善やregressionを見つけるためのツールです。実は今読んでいただいているこの記事自体、そのAgent Model Advisorに記録したexecution observationを元にしています。関連: Claude CodeとCodex、どのモデルを使う?の記事。
学習を正式なideation経路へ戻した
この後、Personal Fit、Builder Interest、繰り返しトリガー、蓄積する価値、deterministicな価値、商業化の道、といった観点を正式なideationの入力へ反映しました。
ただし、Personal Fitをhard filterにはしませんでした。自分に完全一致しなくても、strongly adjacentでmoney flowが強い候補は残す設計にしています。「自分が好きなものだけ」に閉じてしまうと、今度は市場側の検証ができなくなるためです。複数のAIプロジェクトを横断して扱う作業自体は、以前Agent Workbenchのdogfood公開の記事でも書きました。
誰でも真似できる方法
専用のシステムを作らなくても、候補を出すたびに自分自身へ次を聞くだけで、同じ効果は得られると思います。
- 自分で使いたいか
- 作りたいか
- 繰り返し使うか
- 履歴が積み上がると価値が増えるか
- 他人がお金を支払う理由があるか
ポイントは、Q1=NO / Q2=NOの候補を増やし続けないことです。Q1=YESになった候補の共通点を、次に生成させる条件へ戻す。これだけで、生成量を増やすよりも効率よく「自分が本当に作りたい候補」に近づけました。
まとめ
今回振り返ってみると、AIのアイデア生成能力を上げるよりも、「自分が何にYESを出す人間なのか」をAIへ返すほうが効きました。まだ Q1=YES / Q2=YES が1件出ただけの段階なので、これが一般化できる方法かどうかは、これからのdogfoodで確かめていきます。